銀行や証券業務を行う金融機関等で働く人にとって必須の二種証券外務員資格。金融商品の多様化・複雑化に伴い、その役割は大きくなっています。この『証券外務員二種編』中嶋航のブログは、中嶋航が証券外務員二種の資格取得を目指して、知識を蓄積させていくための学び場専用ブログです。
7節 株式会社の機関Ⅱ
2.株主総会
株主総会は株主全員が構成する会議体の機関であり、
定められた手続きで会議を開き決議や報告が行われます。
しかし、例外的に会議を開催せずに済ませてよい場合があります。
議決権を行使できる株主の全員が、書面や電磁的記録で同意を
示すと、その事項は総会が可決したとみなされます。
(1)株主総会の招集
株主総会には、定時総会と臨時総会の2種類があります。
◆開催
(定時総会)毎決算期に1回、その年度の成果を確認するために開催。
(臨時総会)必要に応じて開催。
◆招集
定時総会、臨時総会ともに、日時・場所・議題を取締役会が決定し、
代表取締役が2週間前までに招集通知を出す(株主が承諾すれば
電子メール等で通知することも可)。例外的に、公開会社ではない会社は、
1週間前に出せばよく、定款でこの期間をもっと短縮することができる。
さらには議決権のある株主全員の同意があれば、招集手続なしで
開催することもできる。
◆決議
招集通知に議題として掲げていない事項について決議するのは違法。
ただし、取締役会を置かない会社では、株主総会で決議できる事項は無制限。
◆少数株主
議決権総数の3%以上(公開会社では引き続き6カ月以上)を持つ少数株主は、
取締役会に株主総会の招集を請求し、拒否されれば裁判所の許可を得て
自分で株主総会を招集することができる。
◆公開会社の場合
取締役会のある公開会社の場合、引き続き6カ月以上議決権総数の1%以上
又は300個(単元株制度をとる会社では300単元)以上の議決権を持つ株主には
提案権を行使して、議題を株主総会に追加させることが認められている。
総会日の8週間前に書面で請求する。
(2)議決権
①1株1議決権の原則(単元株制度をとる場合は1単元1議決権)
株主総会においては、株主の頭数ではなく、投下した資本の額に応じて議決権が
与えられます。ただし、会社が持っている自己株式には議決権がありません。また、
持合株式の抑制のため以下の制限があります。
※A社がB社の議決権総数の4分の1超を持つとき、B社がA社株を保有しても
それには議決権はない。
②議決権の行使
株主本人が株主総会に出席する必要はなく、代理人に議決権を
行使させてもよいとされています。
③株主総会に出席しない株主
株主総会に出席しない株主は、議決権行使書面(書面投票用紙)に賛否を
記入して会社に送る方法で、決議に参加することができます(代理人が
不要な点で委任状と異なります)。
(3)決議
決議には、普通(通常)決議と特別決議に加えて特殊決議があります。
◆①普通決議(通常決議)
議決権総数の過半数を持つ株主が出席し(定足数)、出席株主の議決権の
過半数の賛成により成立。
◆②特別決議
議決権総数の過半数を持つ株主が出席し(定足数)、出席株主の議決権の
3分の2以上の賛成により成立。
◆③特殊決議
議決権を行使することのできる株主の頭数で半数以上かつ議決権の3分の
2以上の賛成により成立。
①普通(通常)決議
・取締役・監査役・会計参与・会計監査人の選任
・取締役・会計参与・会計監査人の解任
・取締役の報酬(取締役の報酬は、株主総会又は定款で定めるものとされる)
・計算書類の承認
普通決議の定足数は、定款によって変えることはできますが、
取締役・監査役・会計参与・会計監査人の選任決議および監査役以外の
解任決議については、定款によっても定足数を議決権総数の3分の1未満に
下げてはならないとされています。
②特別決議
・特定の株主からの自己株式の取得
・株式併合
・取締役会がない会社の新株発行
・監査役の解任
・取締役・監査役・会計参与・会計監査人・執行役の責任の軽減
・資本金の減少
・金銭以外の財産による配当
・定款の変更・事業譲渡・解散・清算
・組織変更・合併・会社分割・株式交換・株式移転
特別決議については、定款で議決権総数の3分の1まで緩めることができます。
③特殊決議
株式譲渡の制限を定めた定款を変更する決議があります。
(4)議事録
株主総会の議事録は本店(10年)、支店(5年)に備え置き、株主と会社債権者に
見せなければなりません(閲覧に供されます)。
7節 株式会社の機関
1.株式会社の概要
株式会社が活動するには資金が必要です。
株式会社は株式を発行して資金を調達します。
その際、出資をして株式を取得する者を株主といいます。
株主には、出資の見返りとして自益権や共益権などの権利が
与えられます。法的には会社の基本的事項は株主総会で
意思決定しますが、実務的には取締役や代表取締役が
これを行います。また、株式会社の運営が適切に行われているか
チェックが必要ですので、監査役(会)などがこれを行います。
そして株式会社は、活動成果を財務諸表を作成して株主総会で
報告します。
株式会社の機関は以下の通りです。
①株主総会 ②取締役 ③取締役会 ④監査役
⑤監査役会 ⑥会計監査人 ⑦会計参与
⑧委員会(指名/監査/報酬) ⑨執行役
このうち株式会社に必ず必要となる機関は
株主総会と取締役です。
6節 株券と株主名簿
1.株券と株主名簿
会社法は、株券のない会社を原則としています。
株券を発行しようとする会社は定款にそのことを定める必要が
あります。このような定款規定のある会社を株券発行会社と呼びます。
株券発行会社は、株式を発行すれば遅滞なく株券を発行する
必要がありますが、公開会社でない会社の場合は、株主から請求が
あるまでは株券を発行しなくてよいとされます。
(1)株券の記載
株券には、会社の商号や株式数などを記載し、
代表取締役(委員会設置会社では代表執行役)が署名または
記名押印します。
(2)名義の書換え
株式の譲渡や相続があっても、外部からはわかりません。
そこで、会社法では、株式の移転があっても、株主名簿に名義書換えが
なされるまでは、会社との関係では移転があったといえないことにしています。
(3)株主名簿と基準日
株主総会の招集通知、剰余金の配当、新株割当通知などは、
株主名簿に記載された株主宛に送る必要がありますが、株主は絶えず
変動します。
会社は、権利を行使することのできる株主を確定するため、一定の日
(基準日)に株主名簿に載っている株主に権利を行使させることができます。
また定款で指定していない基準日を臨時に設けるには2週間前までに
公告が要求されます。
5節 株式の譲渡Ⅱ
2.自己株式(金庫株)の取得
会社が自社の発行する株式を取得すると、出資の払戻しと
同じことになります。また、自己株式を取得すると株価操作や
取締役の地位防衛の手段になる等、株価によっては株主に
不公平をもたらします。
このような弊害を防止するため、自己株式の買付けや
処分については、手続き、財源、買付方法や取締役の責任が
定められています。
株主総会が株式数。対価や期間を定めて決議すれば、
会社は自己株式を取得することができます。
会社が取得した自己株式は、消却や処分をしてもよく、
そうしないで保有しておくこともできます。
保有していると会社自身が株主ですが、議決権や剰余金の
配当を受ける権利などはありません。
自己株式を処分すればその相手が株主になり、新株発行を
するのと同じ結果になります。処分の相手や価格の定め方が
不公正にならないよう、新株発行と同じ手続きで行う必要が
あります。
5節 株式の譲渡
1.譲渡の自由と定款による制限
(1)自由な譲渡とその制限
株主にとっては、投資の回収は株式の譲渡によるほかないので、
株式には強い譲渡性が必要となります。一方で、望ましくない株主を
排除するために会社はこの譲渡性に制限を加えることができます。
会社が発行する全部の株式について譲渡を制限したり、一部の
種類の株式だけ譲渡を制限することもできます。
(2)譲渡制限の定め
株式の譲渡が制限されるのと投資の回収は大変ですから、
譲渡制限を新しく設ける定款変更手続きは厳格です。
具体的には、全部の株式について譲渡を制限する場合は、
株主総会で議決権を行使することができる株主の、頭数で
半数以上、議決権の3分の2以上が賛成する必要があります
(特殊決議)。この要件は定款で加重できますが軽減はできません。
この定款変更に反対の株主は、持株の買取りを会社に請求する
ことができます。また、株式の譲渡が制限されることは登記に
よって公示し、株式のもそのことを記載する必要があります。
4節 株主の権利
1.株主の権利
(1)自益権と共益権
株主の権利には自益権と共益権があります。
◆自益権
剰余金や残余財産の分配を受ける権利などのように、
その株主個人の利益だけに関する権利。
◆共益権
議決権や各種の訴権(株主代表訴訟など)のように、
その行使が株主全体の利害に影響するもの。
(2)少数株主権と単独株主権
◆少数株主権
一定割合以上の株式を持った株主だけが行使できる権利。
少数しかいない株主なので、大株主であるともいえる。
少数株主権には株主の提案権、取締役・会計参与・監査役の
解任を求める権利や帳簿閲覧権などがある。
少数株主には大株主としていくつかの権利が与えられているが、
濫用を防止するために持株の要件がある。
◆単独株主権
1株しか持たない株主でも行使できる権利。
(3)株主平等の原則
同じ種類の株式には、すべて同じ内容の権利があり、
株主は持株数に比例して会社に対する権利を持っています。
3節 株式Ⅲ
3.株式の種類
株式は誰が所有しても権利の内容に変わりはありませんが、
定款によってこれにさまざまの修正を加えることができます。
会社が発行する全部の株式についての修正もできますし、
一部の株式について異なる権利内容を定めることも可能です。
後者の場合は2種類以上の株式が併存することになり、
そういう会社を種類株式発行会社と呼びます。
(1)剰余金の分配に関する種類株式
◆(配当)優先株
ある種類の株式にまず一定率の配当をし、残った剰余金から
他の株式に配当する場合、前者の株式を優先株式という。
◆普通株
一般的に最も中心的に発行されている株式。
◆後配株(劣後株)
一般の株式に配当した残りの剰余金からしか配当を
受けられない株式。標準となる一般の株式は普通株。
(2)残余財産の分配に関する種類株式
会社が解散したときの残余財産分配について、
扱いの異なる種類の株式を発行することもできます。
(3)議決権制限株式
議決権が全くない株式のほか、総会決議事項の一部についてだけ
議決権がある株式を発行することもできます。完全な議決権のある
株式以外はすべて議決権制限株式です。
公開会社では、その合計が発行済株式総数の2分の1を超えると、
2分の1以下にするための措置をとらなければなりません。
(4)譲渡制限株式
譲渡に会社の承認が必要な株式です。全部の株式について譲渡を
制限することもできますし、ある種類の株式だけ譲渡を制限する
こともできます。
(5)取得請求権付株式
株主が請求すれば会社が買い取ることを発行の時から約束している
株式です。金銭を対価にするのが通常ですが、その他の財産を
対価にすることができます。
(6)取得条項付株式
取得のイニシアチブをとることが株主ではなく会社になっているのが
取得条項付株式です。金銭を対価にするのが通常ですが、
その他の財産を対価にすることができます。
3節 株式Ⅱ
2.単元株制度
単元株制度を採用することによって一定の数の株式を持つ
株主だけに議決権を認めるようにすることができます。
単元株制度を採用すること及び一定の数をいくらにするか
(最大1000株)は定款で定めることとなっています。
1単元の大きさを単元株式数と呼び、株式の種類ごとに
その数を決めます。
単元株制度をとる会社の株主は、1単元の株式ごとに
1個の議決権を持ちます。
◆単元未満株主の権利
・議決権なし(株主総会の召集通知もなし)
・余剰金分配請求権や残余財産分配権はあり
◆単元未満株主の投資回収
投資を回収したいときは単元未満株式を会社に買い取ってもらう。
また定款に定めがあれば、単元未満株式を会社から売ってもらい、
手持ちの分と合わせて1単元にすることもできる。
3節 株式
1.株式の分割・併合と消却
(1)株式の分割・併合
1枚を分けて複数の株式にすることを株式の分割といいます。
逆に複数の株式をまとめて1株にすることを株式の併合といいます。
◆株式の分割
・1株を分けて複数の株式にすること。
・発行済株式は増えるが、1株当たりの実質的価値は小さくなる。
・株式の分割は取締役会の決議で決定
(取締役会のない会社は株主総会で決議)。
◆株式の併合
・複数の株式をまとめて1株にすること。
・発行済株式は減るが、1株当たりの実質的価値は大きくなる。
・株式の併合は株主総会の特別決議が必要。
(2)株式無償割当
新たな払込みなしで株主に株式を割り当てることを
株式無償割当といいます。
この株式無償割当は、自己株式は割当対象外と
なっているところが株式の分割と異なります。
(3)株式の消却
発行されている株式をなくしてしまうことを株式の消却といいます。
消却によっても発行済株式が減少します。
消却はすべて会社がいったん株式を取得してから行います。
どの種類の株式を何株消却するかは、取締役会の決議で定め、
取締役会のない会社では取締役が決めます。
2節 株式会社の特色と設立Ⅳ
4.設立の無効
会社の設立手続きに重大な法令違反があると、会社の設立の無効が
問題となります。設立の無効が主張できるのは株主と取締役(会社に
よっては監査役・執行役・清算人も可)に限られ、設立登記の日から
2年以内に裁判所へ訴えることによってしか主張できません。
2節 株式会社の特色と設立Ⅲ
3.株式の発行・役員の選任・登記
(1)発起設立と募集設立
◆発起設立
会社が設立に際して発行する株式の全部を発起人だけで
引き受ける設立方法。
◆募集設立
会社設立の際に発行する株式の総数のうち、発起人が
一部を引受け、残りを株主募集によって引受けてもらう設立方法。
(2)役員の選任
株主全部について、出資金額の履行が完了すると、取締役を選任し、
設立が適正に行われたかどうかを調査します。
(3)登記
所定の手続きが完了すると設立の登記をします。登記によって会社は
成立し、法人格が認められます。会社の目的など登記必要事項に
変更があった場合は、定款変更の手続きを履行したうえで変更の
登記をする必要があります。
2節 株式会社の特色と設立Ⅱ
2.設立の手続き
(1)定款の作成
株式会社を設立するには、発起人(1人でも可能・法人でも可能)が
定款を作って署名します。いかなる理由があってもこの定款の作成は
省略できません。また、定款は公証人の認証を受けなければなりません。
(2)定款記載事項
定款に記載しなければならない事項は以下のとおりです。
①会社の目的
②商号
③本店所在地
④設置に際して出資される財産の価額又はその最低額
⑤発起人の氏名又は名称及び住所
(3)一人会社
発起人は1人でもよいことから、株主が1人だけの会社(=一人会社)を
設立することも可能です。例えば、親会社が子会社の株式を全部持つ
完全親会社・完全子会社の形態があります。
2節 株式会社の特色と設立
1.株式会社の特色
(1)株式の発行
株式会社は株式を発行することにより、広い範囲の者から
資本を集めることができるので、大きな事業を行うことができます。
(2)株主の有限責任
株主有限責任の原則とは、株主に追加出資の義務はなく、
会社が債務をはらえないからといって、株主が会社債権者に
対し弁済の責任を負うことはないということです。
(3)資本金
◆資本金不変の原則
いったん定めた資本金の額を勝手に減らしてはならないという原則。
◆資本維持の原則
会社は公示した資本金の額に相当する財産を保持するよう
努めなければならないという原則。
◆出資
会社を設立するときは、どれだけの出資を確保するかを定款で定める。
従来あった最低資本金制度はなくなったので、資本金1円の株式会社も
設立可能。
また、土地・建物や特許権など、金銭以外の物を対価に株式を発行したり
することもできる(現物出資)。
それらの財産を会社が成立すれば譲り受けることをあらかじめ約束して
おく(財産引受け)には、それぞれ定款に記載することが必要。
◆資本金の額
資本金の額は、「株式の払込金額×発行した株式数」であることが
原則だが、発行時に決めれば、払込金額の2分の1以内は資本金に
入れなくてよいとされている。資本金の額は登記し、貸借対照表で公示する。
(4)多様な株式会社の分類
①大会社
資本金の額が5億円以上または負債総額が200億円以上の株式会社を
いいます。大会社は他の会社よりも厳しい規制を受けます。
◆大会社の規制
・必ず会計監査人を置かなければならない。
・貸借対照表だけでなく損益計算書も公告する。
②公開会社
その会社が発行する株式について、譲渡に会社の承認が要るという定款の
定めを設けていない会社をいいます。
株式を上場している会社という意味ではありません。
◆公開会社の規制
・必ず取締役会を置かなければならない。
・議決権制限株式は発行済株式総数の2分の1以下に抑える必要がある。
③△△設置会社
ある機関を備える会社はその機関名を冠して△△設置会社と呼ばれます。
例えば、取締役会設置会社などがあります。
ただし、執行役は常に委員会とセットになっており、別個に設置されることは
ありませんので、執行役設置会社という呼び方はせず委員会設置会社と呼びます。
1節 会社
1.会社の種類
事業に失敗したときの責任の負い方や組織の特徴により、
会社法は以下の4種類の会社を認めています。
なお、保険企業における相互会社は、共同組合に似た組織であり、
会社法上の会社ではありません。
①株式会社
社員(法律の世界では「社員=出資者(株主)」となる)は、
会社の債務について全く責任を負わない(有限責任)。
②合名会社
社員は会社に対して出資義務を負うだけでなく、
会社の債務(借金)につき、債権者(お金を貸してくれた人)に対して
直接・連帯・無限責任を負う。
③合資会社
無限責任社員(合名会社の社員と同じ責任を負う社員)が
最低1名必要で、他に有限責任社員が1名以上いる。
④合同会社
社員は有限責任社員ばかり。アメリカのLLCがモデル。
※用語
【有限責任】
文字通り、責任に限りが有ることで、
ここでは自分の出資以上の支払義務がないこと。
【無限責任】
自分の出資金以上の債務の支払義務があること。
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