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3節 金融商品取引所における株式の売買

1.売買の種類


金融商品取引所における株式の売買の種類は以下のように
区分されます。


◆決済日の違いによる区分


(1)当日決済取引 (2)普通取引 (3)発行日決済取引


◆信用供与の有無による区分


(1)現物取引 (2)信用取引


◆売買立会市場によるか否かの区分


(1)立会内売買 (2)立会外売買




2.決済日の違いによる区分


(1)当日決済取引


 売買成立のその日に受渡し決済をする取引です。


(2)普通取引


 売買成立の日から起算し4営業日目に受渡決済をする取引で、
最も一般的なものです。
 この取引には現物取引と信用取引があります。


(3)発行日決済取引


 発行日決済取引とは、内国株券の発行者(企業)が株主割当により
新たに発行する株券を対象とした取引です。取引は新株の割当を受
けてから新株券の交付までの期間に行い、委託証拠金の差入れが
必要となります。




3.信用供与の有無による区分


(1)現物取引


 売買を行おうとする個人や法人が、自分が保有している株式の売却や
自己資金を使って株式を買う場合を現物取引といいます。


(2)信用取引


 投資家が金融商品取引業者から、購入代金を借りて株式を買うとき、
又は株券を借りて売りつける場合を信用取引といいます。




4.売買立会市場による否かの区分


(1)立会内売買(立会市場による売買)


 立会内売買における取引の方法はオークション方式による売買となります。
 オークション方式による売買とは、投資家の売り・買いの注文を銘柄ごとに
集計し、最も低い値段の売り注文と最も高い値段の買い注文とが合致して
約定するという個別競争売買によって行われる取引です。


(2)立会外売買


 立会外売買とは、立会内売買のように個別競争売買によらず、一般的には
売り手と買い手が合意した価格・数量等によるクロス取引で約定を成立させる
取引のことをいいます。
 立会外売買は、以下のように各取引所の電子取引ネットワークシステムを
介して行われる売買制度です。


・東証:ToSTNet1(単一銘柄取引、バスケット取引)、ToSTNet2(終値取引)


・大証:J-NET ・名証:N-NET


 立会外売買はその取引手法によって、立会外単一銘柄取引、立会外バスケット
取引、終値取引、自己株式取得取引に区分されます。


◆立会外単一銘柄取引


単一銘柄のクロス取引のこと。


◆立会外バスケット取引


15銘柄以上かつ売買代金合計が1億円以上で構成されるポートフォリオをワンセット
で売買する取引。


◆終値取引


終値又はVWAPにより行う取引。


◆自己株式取得取引


大証及び名証に設けられている事前公表型自己株式取得に特定した制度に
おける取引。

2節 取引の種類・売買の形態Ⅱ



2.売買の形態




 株式の売買形態は、大きく以下の5つに区分されます。




(1)株式の売買(自己取引)




 金融商品取引業者が自己の計算(自社の損得)で行う売買

のことを自己取引といい、取引所において執行する売買と

取引所外で行う仕切取引とがあります。




(2)株式の売買の取次ぎ(委託取引)




 顧客からの売買注文を、顧客の計算(顧客の損得)において

金融商品取引業者の名で行う取引です。売買を委託されて執行

することから委託取引といわれます。

 具体的には金融商品取引業者が顧客からの売買注文を取引所

で執行する場合は、多くがこの形態となります。




(3)株式の売買の代理




 顧客からの売買注文を、顧客の名で金融商品取引業者が代理人

であることを明示して執行する取引形態です。具体的には、公開買付

(TOB)時に金融商品取引業者と顧客との間で代理人契約を締結して

金融商品取引業者が公開買付代理人となって行う買付があります。




(4)株式の売買の媒介




 株式の売買に際し、売り手と買い手の間で売買の成約に尽力する

行為です。具体的には金融商品取引業者が顧客の要請により取引

所外で売買の仲立ちを行うことなどがこれに当たります。




(5)取引所金融商品市場における売買の委託の媒介、取次ぎ又は代理




 取引所の取引参加者でない金融商品取引業者が、顧客からその取引

所に上場されている有価証券の売買注文を受託した際に、注文をその

取引所の取引参加者に再委託して売買を執行してもらう場合等がこれに

当たります。



2節 取引の種類・売買の形態Ⅰ



1.取引の種類




 株式の取引は、売買される株式の上場区分と売買される場所によって、

大きく区別されることができます。株式の上場区分とは株式が取引所に

上場しているか否かの区分です。売買される場所とは株式が取引所内で

売買されているのか取引所外で売買されているのかの区分です。




◆取引所取引




わが国では有価証券の売買を行う場所として、東京・大阪・名古屋・福岡

・札幌に取引所があり、取引所金融商品市場が開設されている。




◆取引所外取引




上場株券等の取引所外での取引。




◆店頭取引




店頭取引の概念には、広義に「有価証券の上場区分に関わらず取引所の

外(金融商品取引業者の店頭)で売買される取引」と「取引所に上場してい

ない有価証券の取引」という2つの考え方がある。

1節 株式と証券会社の全体像



1.株式の全体像




 これから3章株式業務、4章取引所定款・諸規則、5章協会定款・

諸規則にて株式について学習します。大まかに各科目の役割として、

株式の全体像については3章株式業務に、上場株式の取引ルールに

ついては4章取引所定款・諸規則に、非上場株式については5章協会

定款・諸規則の一部に記述があります。







2.証券会社




 一般に株式を扱うのは証券会社ですが、外務員試験においてはこの

証券会社を金融商品取引業者、(協)会員や取引参加者と呼びます。

これは、金融商品取引法(金商法)、協会定款・諸規則や取引所定款・

諸規則といった法律・規則が証券会社をそれぞれの名称で定義して

いるからです。







3.その他




◆証券業協会




(認可)金融商品取引業協会・日本証券業協会




◆取引所




金融商品取引所・東京証券取引所


3節 企業分析Ⅴ・Ⅵ



5.成長性分析




通常、増収率とは、売上高成長率のことを意味しています。




(1)売上高成長率




売上高成長率(%)=当期売上高/前期売上高×100




(2)利益成長率




利益成長率(%)=当期利益/前期利益×100






6.損益分岐点分析




(1)損益分岐点分析の意味




企業の将来の利益計画を立てる場合、売上高の増減によって費用と利益が
どのように変動するかを把握しなければなりません。このような売上高、費用、
利益相互間の分析に用いられるのが損益分岐点分析です。

損益分岐点とは、売上高と費用とが均衡し、損益がゼロとなるときの売上高を
いいます。

損益分岐点を算定するためには、すべての費用を固定費と変動費に区分しな
ければなりません。固定費とは、売上高の増減に関係なく発生する費用をいう
のに対し、変動費とは、売上高の増減に比例して発生する費用をいいます。




(2)損益分岐点分析の公式




外務員試験の損益分岐点分析については、まず以下の公式を覚えておいてください。




損益分岐点売上高=固定費/1-変動費/売上高







損益分岐点比率(%)=損益分岐点/売上高×100







変動費率=変動費/売上高  限界利益率=1-変動費率


3節 企業分析Ⅳ



4.資本効率分析




(1)回転率と回転期間




①回転率




 回転率とは、その売上高を得るために、1年間に資本又は資産が何回利用された

かを意味します。資本回転率が高ければ、資本効率はよいと言えます。回転率は

一般に、分子に年間の売上高を、分母に対象となる資本又は資産をとって計算します。




②回転期間




 回転期間とは、資本又は資産が1回転するのに要する期間を意味します。

回転期間が短ければ、資本効率はよいと言えます。




(2)総資本回転率と総資本回転期間




①総資本回転率




 経営活動の能率を判断する指標で、資本の有効な利用度を示すものです。




総資本回転率=年間の(純)売上高/総資本(期首・期末平均)




②総資本回転期間




 回転率の逆数で表されます。




総資本回転期間(月)=総資本(期首・期末平均)/年間の(純)売上高×12




=総資本(期首・期末平均)/年間の(純)売上高÷12




したがって次式が成り立ちます。




回転期間=12/回転率  回転率=12/回転期間



3節 企業分析Ⅲ



3.安全性分析




安全性とは、企業の資金繰りの健全度合いや債務不履行などの形で

倒産に陥る危険性の程度をいいます。




(1)流動性分析(企業の支払能力を示す)




①流動比率




この比率は、流動資産を処分したときに、それにより流動負債を担保し

得るかどうかを見ようとするもので、短期的な債務の返済能力を表します。

つまり、1年以内に返済しなければならない借金に対して、1年以内に現金

化できる資産がどの程度あるかを表しています。




流動比率(%)=流動資産/流動負債×100




②当座比率




流動資産の中に含まれる棚卸資産は生産販売活動を経て初めて資金化

されるもので、ただちに支払手段となるものではありません。そこで当座資産

のみを支払手段として支払能力を見ようとするのがこの比率です。つまり、

流動比率よりもより短期間で現金化できる資産がどのくらいあるかを表して

います。




当座比率(%)=当座資産/流動負債×100




(2)財務健全性分析




資金をどうやって調達したか、資金の使い道が妥当であるか、又は資本が

健全であるかを分析します。




①固定比率




固定資産が、返済の必要のない自己資本でまかなわれているかどうかを

見る指標です。




固定比率(%)=固定資産/自己資本×100




②固定長期適合率




この指標は、固定資産の資本金を自己資本に限定せず、短期的な返済の

必要がない固定負債も含めて検討しようとするものです。日本企業の場合、

銀行からの長期借入や社債発行による長期借入が多いため、健全性の分析

にはこの指標が適しているといわれています。

なお、連結財務諸表においては少数株主持分を考慮します。




固定長期適合率(%)=固定資産/自己資本+少数株主持分+固定負債×100




③負債比率




返済の必要のない自己資本に対して負債の総額がいくらあるのかを示す

指標です。




負債比率(%)=流動負債+固定負債/自己資本×100




④自己資本比率




資本調達の構成を表す比率であって、すべての資本の中で返済の必要のない

自己資本がどの程度あるのかを示す指標です。つまり資本金の中の借金と自己

資本の比率を表しています。




自己資本比率(%)=自己資本/総資本×100




3節 企業分析Ⅱ

2.収益力分析


一般的に投資を考える場合、まず収益力の高い企業であるかどうかが
ポイントとなります。そこで用いられるのが、資本利益率と売上高利益率です。


【資本利益率】


利益というものを、資本を利用した結果として生じるものとみた場合、
投下資本と関連付けて収益力を判断するのが資本利益率。


【売上高利益率】


利益の基本となる源泉は売上高であるので、売上高と利益を関連付ける。


(1)資本利益率


資本利益率(%)=利益/資本(期首・期末平均)×100


①自己資本利益率(ROE:Return On Equity)


自己資本に対する当期(純)利益の比率を表しています。つまり、株主の
お金をどれだけ有効につかっているかを示す指標です。
一般に自己資本利益率が高いほど、企業の収益性は高くなります。


自己資本利益率(%)(ROE)=当期(純)利益/自己資本(期首・期末平均)×100


②総資本利益率(ROA:Return On Asset)


企業に投下された資本全体(他人資本+自己資本)の収益力を表すものです。
つまり、株主のお金や借入金を含めていかに有効に資金を活用し、利益をあげ
ているかを示す指標です。


総資本利益率(%)(ROA)=当期(純)利益/総資本(期首・期末平均)×100


③資本金(純)利益率


資本金(純)利益率は、当期(純)利益と資本金(資本の部の中で資本金で、
資本準備金、利益準備金、その他の剰余金は含まない)との割合を示すも
ので、何割程度の配当ができるかを表現するものです。


資本金(純)利益率(%)=当期(純)利益/資本金(期首・期末平均)×100


(2)売上高(純)利益率


①売上高(純)利益率


売上高(純)利益率は、当期の各種利益額と売上高との割合を示すもので、
売上高を100%とした場合、利益額が何%あるかを示すものです。


売上高(純)利益率(%)=当期(純)利益/(純)売上高×100


②売上高総利益率


売上高総利益率は、売上高に対する売上総利益の割合を示すもので、
企業の購買・製造活動の良否を示しています。


売上高総利益率(%)=売上総利益/(純)売上高×100


③売上高営業利益率


売上高営業利益率(%)=営業利益/(純)売上高×100


④売上高経常利益率


売上高経常利益率(%)=経常利益/(純)売上高×100



3節 企業分析Ⅰ



1.はじめに




 企業分析とは、財務諸表の数値を利用して会社の収益性、安全性、

資本効率、成長性を分析することをさします。

 企業分析は連結財務諸表を用いて行いますが、すでに学習した個別

(単独)の財務諸表と原則として同様に考えることができます。

 ここでの連結と単独の主な違いは、連結の貸借対照表には純資産の

部の中にある少数株主持分という連結固有の勘定科目が出てくること

です。




<単独の貸借対照表>




総資本(単独)=流動資産+固定負債+自己資本




<連結の貸借対照表>




総資本(連結)=流動資産+固定負債+自己資本+少数株主持分







結果として連結の貸借対照表における総資本は以下のように定義できます。




総資本=流動負債+固定負債+自己資本+少数株主持分


2節 景気の動向と収益率・配当性向・配当率Ⅲ

3.配当率

株主が拠出した資本金に対して支払った配当金の割合を示します。

配当率(%)=配当金(年額)/資本金(期中平均)×100


2節 景気の動向と収益率・配当性向・配当率Ⅱ



2.配当性向




配当性向とは、当期(純)利益に対する配当金の割合を示します。




配当性向(%)=配当金額/当期(純)利益×100




①典型的なパターン




・不況期⇒配当性向は高めに現れます。




・好況期⇒配当性向は低めに現れます。




②配当性向の意味




配当性向が低いということは、会社にとっては、社外への支払配当金が

相対的に少なく、会社内部の蓄積が相対的に多い(このことを内部留保率

が高いといいます)ことを意味します。結果として将来の配当可能原資が

確保されます。


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2節 景気の動向と収益率・配当性向・配当率Ⅰ



1.増収率と増益率




・増収率とは、売上高の前期比較に対する増減を表しています。




・増益率とは、経常利益の前期比較に対する増減を表しています。



1節 財務諸表Ⅳ

4.キャッシュ・フロー計算書


キャッシュ・フロー計算書は、一会計期間における
キャッシュ・フローの状況を表示するものであり、
貸借対照表及び損益計算書と同様に企業活動
全体についての重要な情報を提供するものです。


1節 財務諸表Ⅲ



3.損益計算書(PL:Profit and Loss Statement)




(1)損益計算書




損益計算書とは、一定期間(1年又は半年)における企業の

努力(費用)と成果(収益)とを対応表示することによって、一定

期間における企業の経営成績を明らかにする報告書です。




(2)損益計算書の構造




損益計算書では、利用者が利用しやすいように取引の同質性

に着目して収益・費用を対応させた区分表示と各区分ごとの

段階別利益を表示してあります。




(3)各科目の内訳




◆販売費及び一般管理費




商品を販売するのにかかる費用や会社全般の業務の管理に

かかる費用。




<例>人件費、賃借料等




◆営業外収益




企業本来の営業活動以外(財務活動等)によって生じた収益。




<例>受取利息や受取配当金等




◆営業外費用




企業本来の営業活動以外(財務活動等)によって生じた費用。




<例>借入金の利息等




◆特別利益




臨時的な収益。




<例>土地や不動産の売却益等




◆特別損失




臨時的な損失




<例>土地や不動産の売却損等


1節 財務諸表Ⅱ


2.貸借対照表(BS:Balance Sheet)




貸借対照表とは、一定時点における企業の財政状態の一覧表です。

貸借対照表の分析を通じて、企業の安全性や流動性を判断すること

ができます。




・貸借対照表の貸方(右側)は資金の調達源泉を表します。返済の有無に

よって負債と資本に分けられます。金融機関からの借入により資金を調達

する場合をデット・ファイナンス、株式等を発行することにより資金を調達す

る場合をエクイティ・ファイナンスといいます。負債は返済の必要があり、

資本は返済の必要がありません。一方、貸借対照表の借方(左側)は資産

の運用状況を表します。




(1)資産の部




資産の部は会計学上、流動資産、固定資産及び繰延資産に分類されます。




①流動資産と固定資産の分類方法




資産は、営業循環基準と1年基準により流動資産又は固定資産に

分類されます。




◆営業循環基準




企業の本来の事業活動により現金が商品となり、また現金として戻ってくる

ような営業循環過程内において発生したものを流動項目とし、それ以外を

固定項目とする基準。この過程にある項目はすべて流動項目となる。




◆1年基準




営業循環基準では分類できないもの(営業循環基準外の債権・債務など)に

ついて、原則として1年以内に現金化できるものを流動項目、1年を超えて

現金化できるものを固定項目とする方法。




(2)各資産の内容




・流動資産




流動資産は、当座資産、棚卸資産、その他の流動資産に細分されます。




◆当座資産




販売過程を経ることなく比較的短期間に容易に現金化できる資産をいう。




<例>現金、預金、受取手形、売掛金、一時所有の有価証券 等




◆棚卸資産(在庫)




販売目的で保有される資産、販売資産となるために生産過程の途中にある

資産をいう。




<例>製品・商品、半製品・仕掛品(製造過程にあり未だ完成していないもの)、

原材料 等




・固定資産




固定資産は、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産に分類されます。




◆有形固定資産




生産準備手段として役立つ実体価値を有する使用資産をいう。




<例>建物・構築物、機械及び装置、船舶・車両・運搬具、土地 等




◆無形固定資産




実体価値をもたない法律上の権利(特許権等)と事実上の権利(のれん等)から

なっている。




<例>のれん、特許権、地上権、意匠権、商標権、漁業権 等




・繰延資産




<例>創立費、開業費、株式交付金、社債発行費 等




(2)負債の部(他人資本)




負債の部は会計学上、流動負債と固定負債に分類されます。




①流動負債と固定負債の分類方法




負債の流動、固定の分類は、資産の分類と同様に営業循環基準と1年基準に

よって行います。




②流動負債




原則として1年以内に返済期の到来する債務です。




◆短期金銭債務




支払手形(いつまでにいくらを支払うかを約束した証書)、買掛金(商品等を購入

したが、まだ未払いになっている代金)、短期借入金 等




◆短期性引当金




返品調整引当金(販売した商品等がなんらかの理由により返品された場合に

払い戻すための準備金)等




◆その他の流動負債




前受金、預り金、未払費用 等




③固定負債




負債の返済期限が1年を超える債務です。




◆長期金銭債務




社債、長期借入金 等




◆長期性引当金




退職給付引当金 等




(3)純資産の部




純資産の部は、株主資本と株主資本以外の項目に大別することができます。

株主資本を構成する主な要素は、資本金、資本剰余金、及び利益剰余金で

あり、株主資本以外の項目とは、評価・換算差額等、新株予約権、及び少数

株主持分です。また、法定準備金とは、資本剰余金の中の利益準備金のこと

をいいます。




◆資本金




企業が発行した株式と引き換えに株主が出資した額。株主が払い込んだ総額

のうち、資本金とされなかった額は、資本準備金とされる。




◆資本剰余金




資本剰余金は資本準備金とその他資本剰余金に分類される。

株式の発行価額の2分の1を資本準備金とすることができる。




◆利益剰余金




利益剰準備金と資本準備金の合計(法定準備金)が資本金の4分の1に達する

まで、配当金の10分の1以上を資本準備金又は利益準備金として積み立てな

ければならない。なお、利益準備金と資本準備金の合計が資本金の4分の1を

超えていれば、その超過分を配当可能利益に振り替えることができる。







1節 財務諸表Ⅰ



1.概要




企業の経済活動は、最終的には、貸借対照表、損益計算書及び

キャッシュ・フロー計算書に集約されます。貸借対照表、損益計算書

及びキャッシュ・フロー計算書のことを一般的に財務諸表といいます。

作成された財務諸表を通じて、現実の企業の状況を判断することが

できます。この行為を企業分析と言います。

また、金融商品取引法に基づく企業内容開示制度は、連結財務諸表

を「主」とし、個別財務諸表を「従」としています。







10節 組織の再編



1.合併




2つ以上の会社を1つにすることを会社の合併といいます。




◆新設合併




当事会社の全部が解散して新会社を設立する方法。




◆吸収合併




当事会社の1つが存続して他の会社を吸収する方法。







2.会社の分割




会社の1部門を切り離し、別会社として独立させることを新設分割といい、

切り離した部門を既存の別会社にくっつけることを吸収分割といいます。

会社の分割は事業譲渡と違って、その部門を構成する権利義務が個別に

移転されるのではなく、部門ごと一括して継承されます。

株式会社が新設分割をするのに際し、新設される会社が発行する株式を

分割会社(元の会社)の株主に割り当てることも可能です。

新設分割をするには、分割計画書に株式の割当てその他の重要事項を

記載し、株主総会の特別決議でそれを承認します。吸収分割をするには、

分割会社と継承会社の間で吸収分割契約を結び、それを両社の株主総会

の特別決議で承認します。

分割に反対の株主は株式買取請求権を行使できます。分割の無効は

6か月以内に起こす訴えによらないと主張できませんし、分割を無効とする

判決の効力は過去に遡りません。







3.株式交換




株式交換とは、A社がB社の発行済株式全部を取得しようとするとき、

両者の間で株式交換契約を結び、B社の株主が持つB社株をそっくりA社が

発行する新株又は保有中の自己株式と交換することをいいます。この場合、

A社は資金を使わずに完全親会社となり、B社はその完全子会社となります。







4.事業の譲渡




他の会社の事業を譲り受けることによって、会社の規模を拡大することが

できます。この場合は合併と違って、事業を構成する財産を個別に移転する

ことが必要です。譲り受けの対価は金銭その他の財産です。

譲渡する側の会社では、事業全部を譲渡する場合はもちろん、事業の重要な

一部を譲渡する場合も、株主総会の特別決議が必要です。なお、事業全部を

譲渡しても、対価で別の事業をすることもできますから、会社は解散する必要は

ありません(当然には解散しません)。

また、事業の譲渡や譲り受けに反対する株主は、株式買取請求権を行使する

ことができます。




5.組織変更




株式会社は一定の手続きを行えばその組織を変更して、合名会社、合資会社

又は合同会社に変身することができ、逆に合名会社などが株式会社に衣替え

することもできます。




6.会社の解散




会社は、合併や破産、定款に定めた存続時期の満了によって解散するほか、

株主総会の特別決議によっても解散します。


9節 新株発行・社債Ⅱ



2.社債




 社債は長期借入金の一種です。




◆社債の発行




社債の発行は取締役会の決議事項。

取締役会を設置しない会社では取締役が決定する。




◆社債権者(社債を購入した人)の保護




社債を募集するときは、原則として、銀行等を社債管理者として

定めなければならない。




◆新株予約権付社債




新株予約権を付けた社債が新株予約権付社債。社債権者は、

あらかじめ定められた行使価額を払込むことによって、株価が

高くなっていても一定数の株式を取得することができる。

新株予約権付社債には以下の2つのタイプがある。

・社債権者が新株予約権を行使する際に払込みをし、社債を

保有し続けたまま株主になるもの。

・新株予約権が行使された時に、社債を繰り上げて償還し、

その金額を新株の払込に充当するもの。従来の転換社債に

相当するので、転換社債型新株予約権付社債と呼ばれる。

9節 新株発行・社債

1.新株発行


(1)授権資本制度


 会社を設立するときは、定款に定めた発行可能株式総数の4分の1
以上を発行すれば足ります。残りは必要に応じて、取締役会の決議で
随時発行することができます。また、定款を変更して、発行可能株式
総数の枠を広げることができますが、発行済株式数の4倍までしか増や
せません。なお、全部の株式に譲渡制限をつける会社では、設立時の
発行が4分の1未満でよく、定款変更で4倍超にしてもよいので、一挙に
多額の増資をすることができます。


(2)新株発行の手続き


①増資の方法


◆株主割当


現在の株主に、持株数に比例して新株を割り当てる方法。この方法に
よる発行価額は、時価よりかなり低くすることが多くなっている。


◆公募(時価発行)


株主割当の方法をとらない場合には、会社の財務内容に見合う公正な
額を発行価額にすることが必要。


◆第三者割当


このケースでも原則として公募と同じ考え方をとるが、提携先・取引先・
従業員などに、時価より著しく低い価額で新株を割り当てたいときは、
それに必要な理由を示し、株主総会の特別決議を経なければならない。


②発行決議


 発行条件は取締役会決議で決めます。市場価格のある株式を公正な
価額で発行する場合は、発行決議で払込金額そのものを決めなくても、
決定方法を定めておけばよいこととなっています。


(3)新株予約権


 新株予約権者が新株予約権を行使すると、会社はその者に新株を発行
するか、手持ちの自己株式を移転しなければならないとされています。
 権利行使の際に払払込む金額はあらかじめ決まっているので、株価が
それより高いときに行使すれば利益が得られます。株価が低いときは権利を
行使せずに見送ればよいので、新株予約権を有償で取得した者も、その対価
を超えて損をすることはありません。
 新株予約権は、関係会社の役員・従業員や取引先など、誰に発行してもよく、
有償で発行すれば資金の調達にも使えます。
 新株予約権は公開会社では取締役会の決議で発行します。株主以外の者に
特に有利な条件で発行するには株主総会の特別決議が必要です。
 新株予約権はその行使期間内であれば行使できます。行使に際しては、所定
の金額を銀行など払込取扱機関に払込みます。この行使をした日に株主になり
ます。会社自身は、自己の新株予約権を取得することはできますが、それを
行使することはできません。

8節 会社の計算Ⅲ、Ⅳ



3.剰余金の配当




(1)配当の財源




株式会社では剰余金があるときしか配当は認められません。

配当にまわすことのできる分配可能額は、貸借対照表の資産の

額から負債の額を引いて純資産額を出し、純資産額から資本金

の額と法定準備金その他法令が定める額を引くことによって

計算されます。




(2)配当の決定その他




・剰余金の配当はそのつど株主総会で決議。この決議は定時総会で

ある必要はなく、決算期とは別に臨時決算日を定め、その日現在の

臨時計算書類を株主総会、または要件を満たせば取締役会で承認と

なれば、それに基づいて年に何度でも配当することができる。




・配当は金銭以外の財産を支給する方法ですることもできる(現物配当)。




・取締役会設置会社は、定款に定めておけば、記央に1回、取締役会の

決議で金銭配当をすることができる(中間配当)。期末に欠損になるおそ

れのないことが必要であり、年度末に赤字になれば取締役が責任を問

われる。







4.資本金の減少




 資本金の額を減少するには、株主総会の特別決議が必要です。

ただし、欠損を穴埋めするだけのために定時総会で決議する場合は、

普通決議で足ります。

8節 会社の計算Ⅱ



2.準備金




(1)法定準備金




法定準備金は法律が積立てを強制しているものであり、資本準備金と

利益準備金から成っています。

資本準備金は、株式の払込金額のうち、資本金に組み入れない部分や

合併・会社分割・株式交換・株式移転の差益金をここに入れます。

利益準備金は、配当などを剰余金から支出するたびに、その10分の1

以上を積み立てなければなりませんが、資本準備金との合計が資本金の

4分の1に達した後は積み立てなくてもよいとされています。

また、資本金と準備金の合計額に相当する資産を留保したうえでなけれ

ば、剰余金の配当や自己株式の買受けはできません。




(2)法定準備金の減少




資本準備金は、増資を続けるといくらでも増え続けます。増資をすると、

払込金額の半分までは、資本金に入れずに資本準備金としてよいので、

株価の高い会社ではとくにその額が大きくなります。準備金が多いことは

財務面では望ましいのですが、会社運営の面からは、法定準備金は使途

が限られているため不便であるといえます。

準備金の額は株主総会の決議によって減少することができます。減らした

分を会社が自由に使える剰余金にする場合は、債権者のための拘束から

解かれることになるため、債権者保護の手続をとらなければなりません。

8節 会社の計算



1.計算書類




 決算期の株式会社は以下の書類を作成します。




①貸借対照表 ②損益決算書 ③事業報告




④株主資本等変動計算書 ⑤個別注記表




⑥付属明細書




 これらの書類については、以下の過程を経なければなりません。




・それぞれの会社が備える監査機関の監査を受ける。









・監査を受けた後、取締役会の承認を受ける。









・定時総会の招集通知に際して、通知の方法に応じて書面や

電子メールなどにより、計算書類、事業報告及び監査報告を株主に提供する。









・計算書類は定時総会に提出して承認を受けるが、事業報告については

その内容を報告する。ただし、取締役会設置会社では、会計監査人とその

他の監査機関の監査報告がすべて、計算書類を適法と認める意見であれば、

計算書類についても内容の報告だけで足りる。









・定時総会が終わった後、貸借対照表(大会社は損益計算書も)を公告する。

ホームページなどコンピュータを使う方法でもよく、管報や日刊新聞紙を使う

会社は要旨を公告すれば足りる。




さらに、議決権又は発行済株式の3%以上を持つ少数株主には次の権利が

あります。




・もっと詳しく調べるには⇒帳簿閲覧権の行使




・経営に不正の疑いがあるときは⇒裁判所に申し立て、会社・子会社の状況を

調査するための検査役を選任してもらう

7節 株式会社の機関Ⅸ



9.会計参与




会計参与は取締役と共同して計算書類などを作成します。

ですから監査の機関ではありません。




・会計参与になることができるのは、公認会計士・監査法人

・税理士・税理士法人。




・取締役会設置会社でも、株式全部に譲渡制限をつけていると、

会計参与を置けば監査役を設置しなくてもすむ。




・会計参与の選任・解任は株主総会で決議(普通決議)。




・任期は2年ですが、株式全部に譲渡制限をつけた会社は定款で

10年まで延ばせる。




・計算書類などを承認する取締役会に出席して意見を述べる義務がある。

7節 株式会社の機関Ⅷ



8.会計監査人




会計監査人は、計算書類とその付属明細書の監査を行います

(決算監査)。この職務を果たすためには、日頃からたえず監査している

必要があり(期中監査)、そのための調査権限が与えられています。




・大会社はすべて会計監査人を置かなければならず、委員会設置会社

にも会計監査人が必要。




・会計監査人になることができるのは、公認会計士か監査法人に限られ、

しかも会社と利害関係が密な者は除かれる。




・会計監査人の選任・解任は株主総会の決議(普通決議)で行うが、職務の

遂行に支障がある場合などには監査役全員の同意で解任することができる。




・任期は1年だが、定時総会がとくに不再任を決議しないかぎり、自動的に

更新される。

7節 株式会社の機関Ⅶ



7.監査役会




監査役会は監査役全員で組織する会議体の機関です。




・公開会社である大会社には監査役会の設置が必要。




・監査役会を置く会社の監査役は3名以上、

その半数以上は社外監査役でなければならない。




・監査役会設置会社では、監査範囲を会計監査に

限定することはできない。

7節 株式会社の機関Ⅵ



6.監査役




監査役は取締役や会計参与の職務の執行を監査する職責を

負います(業務監査・会計監査)。

取締役会を置く会社には監査役が必要です。ただし全部の

株式に譲渡制限がついている場合、会計参与を置けば監査役は

必要ありません。

会計監査人を置く会社にも監査役が必要です。

委員会設置会社には監査委員会がありますから、監査役を置く

ことはできません。




・株主総会の普通決議で選任、特別決議で解任される。




・任期は4年。ただし、全部の株式に譲渡制限をつけた会社は定款で

10年まで延ばすことができる。




・監査役は、会社又は子会社の取締役・会計参与・執行役や使用人を

兼ねることはできない。

7節 株式会社の機関Ⅴ



5.代表取締役




代表取締役とは、会社の業務執行を行い、対外的に会社の代表者

として行動します。




・取締役会設置会社には代表取締役が1名以上必要。




・代表取締役は株主総会や取締役会の決議を執行。




・代表取締役は会社の業務に関する一切の行為について権限を持つ。

7節 株式会社の機関Ⅳ



4.取締役会




取締役会は任意設置の機関ですが、ここでは取締役会設置会社に

ついて学習します。




(1)取締役会




取締役会はすべての取締役で組織する会議体の機関で、以下の

職務を行います。




・取締役会設置会社の業務執行の決定




・代表取締役の選定及び解職




・取締役の職務の執行の監督




取締役会は、全員が同意すれば招集手続なしに開いたり、会議の

開催を省略したりできます。




(2)取締役会の決議事項




・重要財産の処分や譲受け、多額の借財、重要な人事、支店の変更、

ガバナンス体制の整備




・社債の発行




・募集株式の発行




・新株予約権の発行




・株主総会の招集




・代表取締役の選定と解職




・株式の分割




・準備金の資本組入れ




(3)決議




決議は取締役の過半数が出席し、その出席取締役の過半数をもって

決定します(決議は頭数の多数によります)。また、取締役は株主と違って

決議の代理人の投票は認められません。さらに決議の公正を期すため、

決議に特別の利害関係をもつ取締役は投票してはならないとされています。




(4)議事録




取締役会の議事録は10年間本店に備え置くとされています。

7節 株式会社の機関Ⅲ



3.取締役




(1)取締役の必要人数




取締役会を置く会社には、取締役は3人以上必要です。

取締役会を置かない会社では1人いれば足ります。




(2)取締役の任期




取締役の任期は原則2年以内ですが、短くすることは可能です。

また公開会社でない会社では定款で10年まで延ばすことも可能です。




(3)取締役の選任・解任




取締役は株主総会の普通決議で選任され、任期が満了する前でも

普通決議で解任されます。

なお、不正行為をした取締役の解任が否決されたとき、議決権又は

発行済株式の3%以上(公開会社の場合は引き続き6カ月以上)を持つ

少数株主は裁判所にその取締役の解任を請求することができます。




(4)欠員の場合




取締役に欠員が出た場合、新取締役が就任するまでの間、退任取締役が

職務を続けることになります。

なお、取締役の退任により取締役の員数が法定数を欠けた場合でも、

その会社の監査役に取締役を兼任させることはできません。




(5)取締役の報酬




取締役の報酬は、定款又は株主総会決議で定められるものとされています。

金額が確定しない報酬は算定方法を、金銭以外の報酬は具体的な内容を定めます。




(6)取締役の責任




取締役が任務を怠って会社に損害を与えたときはその賠償責任を負います。

この責任を免除するには、原則として株主全員の同意が必要とされます。

取締役の会社に対する賠償責任を、一定限度で制限することができます。

具体的には以下の方法で行います。




・責任が発生した後に、総会の特別決議で軽減する。

・あらかじめ定款に定めておき、発生後に取締役会の決議で軽減する。

・社外取締役については、定款の定めに基づいて責任軽減の契約を結ぶことも

できる。




ただし、責任軽減をできるのは、単純に任務を怠ったことの責任に限ります。

利益供与・利益相反取引・違法配当などの責任は軽減できません。