銀行や証券業務を行う金融機関等で働く人にとって必須の二種証券外務員資格。金融商品の多様化・複雑化に伴い、その役割は大きくなっています。この『証券外務員二種編』中嶋航のブログは、中嶋航が証券外務員二種の資格取得を目指して、知識を蓄積させていくための学び場専用ブログです。
1節 財務諸表Ⅱ
2.貸借対照表(BS:Balance Sheet)
貸借対照表とは、一定時点における企業の財政状態の一覧表です。
貸借対照表の分析を通じて、企業の安全性や流動性を判断すること
ができます。
・貸借対照表の貸方(右側)は資金の調達源泉を表します。返済の有無に
よって負債と資本に分けられます。金融機関からの借入により資金を調達
する場合をデット・ファイナンス、株式等を発行することにより資金を調達す
る場合をエクイティ・ファイナンスといいます。負債は返済の必要があり、
資本は返済の必要がありません。一方、貸借対照表の借方(左側)は資産
の運用状況を表します。
(1)資産の部
資産の部は会計学上、流動資産、固定資産及び繰延資産に分類されます。
①流動資産と固定資産の分類方法
資産は、営業循環基準と1年基準により流動資産又は固定資産に
分類されます。
◆営業循環基準
企業の本来の事業活動により現金が商品となり、また現金として戻ってくる
ような営業循環過程内において発生したものを流動項目とし、それ以外を
固定項目とする基準。この過程にある項目はすべて流動項目となる。
◆1年基準
営業循環基準では分類できないもの(営業循環基準外の債権・債務など)に
ついて、原則として1年以内に現金化できるものを流動項目、1年を超えて
現金化できるものを固定項目とする方法。
(2)各資産の内容
・流動資産
流動資産は、当座資産、棚卸資産、その他の流動資産に細分されます。
◆当座資産
販売過程を経ることなく比較的短期間に容易に現金化できる資産をいう。
<例>現金、預金、受取手形、売掛金、一時所有の有価証券 等
◆棚卸資産(在庫)
販売目的で保有される資産、販売資産となるために生産過程の途中にある
資産をいう。
<例>製品・商品、半製品・仕掛品(製造過程にあり未だ完成していないもの)、
原材料 等
・固定資産
固定資産は、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産に分類されます。
◆有形固定資産
生産準備手段として役立つ実体価値を有する使用資産をいう。
<例>建物・構築物、機械及び装置、船舶・車両・運搬具、土地 等
◆無形固定資産
実体価値をもたない法律上の権利(特許権等)と事実上の権利(のれん等)から
なっている。
<例>のれん、特許権、地上権、意匠権、商標権、漁業権 等
・繰延資産
<例>創立費、開業費、株式交付金、社債発行費 等
(2)負債の部(他人資本)
負債の部は会計学上、流動負債と固定負債に分類されます。
①流動負債と固定負債の分類方法
負債の流動、固定の分類は、資産の分類と同様に営業循環基準と1年基準に
よって行います。
②流動負債
原則として1年以内に返済期の到来する債務です。
◆短期金銭債務
支払手形(いつまでにいくらを支払うかを約束した証書)、買掛金(商品等を購入
したが、まだ未払いになっている代金)、短期借入金 等
◆短期性引当金
返品調整引当金(販売した商品等がなんらかの理由により返品された場合に
払い戻すための準備金)等
◆その他の流動負債
前受金、預り金、未払費用 等
③固定負債
負債の返済期限が1年を超える債務です。
◆長期金銭債務
社債、長期借入金 等
◆長期性引当金
退職給付引当金 等
(3)純資産の部
純資産の部は、株主資本と株主資本以外の項目に大別することができます。
株主資本を構成する主な要素は、資本金、資本剰余金、及び利益剰余金で
あり、株主資本以外の項目とは、評価・換算差額等、新株予約権、及び少数
株主持分です。また、法定準備金とは、資本剰余金の中の利益準備金のこと
をいいます。
◆資本金
企業が発行した株式と引き換えに株主が出資した額。株主が払い込んだ総額
のうち、資本金とされなかった額は、資本準備金とされる。
◆資本剰余金
資本剰余金は資本準備金とその他資本剰余金に分類される。
株式の発行価額の2分の1を資本準備金とすることができる。
◆利益剰余金
利益剰準備金と資本準備金の合計(法定準備金)が資本金の4分の1に達する
まで、配当金の10分の1以上を資本準備金又は利益準備金として積み立てな
ければならない。なお、利益準備金と資本準備金の合計が資本金の4分の1を
超えていれば、その超過分を配当可能利益に振り替えることができる。